「この人を訪ねて」の目次に戻る。
ZUIUNのトップページに戻る。
松楽窯― 佐々木昭楽さん(ささきしょうらくさん)

 

 
 京都・亀岡市の市街地から車で約十五分、谷あいに山荘風の建物、庭には野点傘。野点傘が木々の緑とあいまって、なんともいえぬ風情を醸しています。ここが今回お訪ねの佐々木昭楽さんの松楽窯です。
 松楽窯では赤楽、黒楽のお茶碗をはじめとして茶陶に力を注いでおられます。
 楽茶碗は、天正年間(1573〜92)に千利休の創意をうけた陶工長次郎が造り始めたと言われています。製法の特色は、轆轤を用いず土塊から形を捻り出して下地(原形)を作る手捏ね成形の後、その下地を鉄の篦で丹念に削り出します。焼くのも屋内の小規模な窯で一碗ずつ焼き上げるという、量産を目的としない製法により作られています。楽茶碗は低火度の軟陶で、焼成温度は赤楽で八百度前後、黒楽で千二百度前後。釉薬は黒楽は、京都加茂川の真黒石を粉砕したものを原料に、赤楽は半透明の白釉を赤土にかけているとのことでした。


佐々木昭楽造 長次郎写銘「大黒」・「無一物」
1944年、京都府亀岡市生まれ。
1962年、父・二代松楽に師事。
赤楽、黒楽を中心に伝統を守りながら、茶陶としての雅味のある作品づくりに力を注ぐ。
鑑賞用でなく、お茶席で楽しくお茶が飲める茶碗づくりをモットーに作陶にいそしむ
 また楽焼では高温に熱せられた窯中に施釉した茶碗を鉄鋏でつかみ入れ、頃合いをみて挟み出して水中に投入する急熱・急冷の『鋏み出し方法』がとられます。特に黒楽では、ハサミ跡がくっきりと付きますが、これは黒の釉薬をいい状態で出すために、千二百度の窯の中より、茶碗をヤットコではさみ出す時に付くもので、これは黒楽茶碗にはなくてはならないものです。
「最近よく『キズ』があるというふうに言われる方もおられるのですが、これは決してキズではありません。黒楽茶碗のハサミ跡も利休居士の残した足跡として、また、味としてお使いいただければ幸いです。」と楽茶碗のはさみ跡について語っておられました。楽焼は利休居士以来、茶の湯のための茶碗としてつくられたものですから、実用面はもちろん茶の湯が求める清閑・静寂・枯淡といった気分がこめられています。


1200度の窯よりヤットコではさみだした黒楽茶碗。



ヤットコをはずすとはさみ跡がくっきりとついています。
 ゆったりとした工房とその裏には窯場。窯場にはいくつもの窯が並んでいました。突然窯場に妙なる音が響きだしました。チンチン、ピンピンと。風鈴でも鳴りだしたのかと、あたりを見回すと、今窯から出したばかりの茶碗が鳴っているのでした。熱い窯からとりだされた茶碗が、空気に触れて、素地と釉薬の収縮率の違いから表面に目にみえない浅い小亀裂が入る音だそうです。陶器自身が奏でる音楽を聴いたようでなんとも心豊かなひとときを過ごさせていただきました。
 お持ちの楽茶碗、大事に使っていただくためにお手入れの方法をお聞きしました。茶碗は、使用前にぬるま湯にどっぷりとつけます。これは清潔さを保つのと同時に破損を防ぐためでもあります。いきなり熱湯を入れるとひびが入ることがあるので注意が必要とのこと。茶碗を拭くときには、力の入れ具合にも気をつけて。あまり力を入れなくても、茶碗には上釉がかけてあるので、意外に取れやすいものだそうです。使用した茶碗を仕舞うときには、湯通しして水気をふき取り、二、三日陰干しをしてかたづけます。楽茶碗は水を吸うので充分に乾燥が必要とのことでした。乾燥が不充分だと臭みがつくこともあるそうです。
茶碗は人様の口に直にふれますので、私どもも充分気をつけていますが、皆様にも気をつけていただきたいことです。と、お茶碗の扱い方も教えていただきました。



「この人を訪ねて」の目次に戻る。
ZUIUNのトップページに戻る。