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陶芸家日展会友−井上佳久さん

 

   
 京都は伝統工芸の都。なかでも京焼は色絵の焼物と薄手の磁器ものとがあり、洗練された意匠と、磨き上げられた陶技は、最大の魅力となっています。
 今回お訪ねした井上佳久さんは、東山五条から和洋どちらの空間にも調和し、魅力的に映える作品の数々を生み出しておられます。
 「父がやっていたので、見よう見真似で‥‥。小さいころから好きなこともありまして‥‥。」と陶芸にかかわり始めた動機を教えてくれました。
 井上さんの焼物の特色を、とお聞きすると、
 「主に磁器物をやっています。純金の発色、塩化金という技法を用いています。純金を使って下絵を描くと、色が中に浸透して外から付けた絵が、中にも同じように表れるんです。ところがこの絵付け、付けたときと焼き上がった時では位置が微妙に移動するんです。その時の窯の雰囲気によっても違ってきますしね。色もちょっとした濃さによって変わってきます。感によって絵を付けていますので100%同じものはありません。よく似ているのはありますが‥‥。」とのことでした。


純金が赤く発色した塩化金のお茶碗。
純金の絵付けが中に浸透して外と内
に同じ絵柄があらわれます。
1947年 陶芸家井上治男の長男として京都に生まれ、六世 清水六兵衛氏に師事。
日展会友。
日本工芸家連盟評議員
1973年第5回日展初入選。
80年日本新工芸展
日本新工芸賞。
81年84年京都市長賞。
84年日本新工芸展
日本新工芸会員賞。
88年第20回日展特選。
93年京展京展賞
など受賞多数。
高島屋美術画廊
(東京・京都・横浜)
をはじめ各地で個展、
グループ展開催、招待出品多数。
 赤く発色した金と、普通によく見る金が星のように散らばったなんともかわいらしい香炉とお茄子の香炉があったのでどういう思いで創られたのか聞いてみました。
 「宇宙をイメージしたものなんですよ。私たちの創るものは夢があるほうがいいので‥‥。見る人によって見方がいろいろあっていいと思います。私なりに自然界のいろいろな現象を雅趣豊かに青白磁の伝統を受け継ぎながら、常に新しい創作を試み、自然の生命感を造形表現しています。宇宙、夢が広がりますし、無限ですし‥‥。またナスビもよく使いますね。ナスビが好きですし、縁起がいいんですね。一富士・二鷹・三茄子っていいますもんね。」と楽しい作品の解説をしてくれました。
 「磁器は冷たいのが欠点ですね。厳しく、冷たくしようと思えばいくらでもできますが、温かみを出そうとするとなかなか‥‥。」とお人柄のように作品も温もりのあるものをと思っておられるようでした。



「紅玉茶碗」



「紅彩連峰茶碗」
 「淡い色が多いんです。カッとした原色は使わないので‥‥。金というのは使い方によって、品のいい色も出ますしね。この塩化金の技法、昔からあったようですが、失敗が多いので、あまり取り組んでおられなくて。表だけしか出ないときとか、裏しか出ないときとか、とんでもないところに出たりもしますので‥‥。今日本で造っておられる方は何人いらっしゃるか。『思わぬ失敗は思わぬいいものができる前兆』」と笑顔で塩化金の技法のむずかしさを語っておられました。
 表から裏に滲み通って、表裏同じ模様が出てくるのは、金の粒子が細かいからだそうです。お値段も金粉の三倍くらいは優にするとか。
 「変化としては、金が一番おもしろいのですが、細かい線が出ないんです。一定の温度ではじめて金の粒子が散らばっていきますし、厚みによっても浸透力がかわってきますしね。」と、金による色の変化を楽しみながら作陶に励んでおられる金の魔術師のような方でした。



いろいろなものが並んだ工房内。
工房の前庭には釉薬の入った大がめが並び、
先代さんからの釉薬もねかせているそうです。
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